
七夕は、短冊に願いを込めて笹に飾る、日本の夏の美しい風物詩です。しかし、七夕が終わった後、これらの飾りをどのように処分すれば良いのか、迷う方も多いのではないでしょうか。「願いが込められた短冊をそのままゴミとして捨てるのは気が引ける」「笹や他の飾りも含めて、気持ちよく手放したい」と感じる方は少なくありません。
ショッピングモール、商店街、介護施設などのイベント担当者様から、毎年、以下のようなご相談をいただきます。
- 「七夕イベントは大盛況だったけれど、残った大量の短冊をどう処分すればいいのか…」
- 「まさかゴミ袋に入れるわけにはいかないし、かといって神社へ持っていく時間もない」
本記事では、七夕飾りを罪悪感なく適切に処分する方法に焦点を当て、特に神社での奉納やお焚き上げの手順、費用について詳しく解説します。また、短冊や笹だけでなく、その他の七夕飾りの後処理についても触れていきます。大切な七夕飾りを心地よく手放したいと考える方々にとって、この記事が役立つ情報源となることを目指します。
七夕飾り・短冊・笹はいつまで飾る?処分のタイミング
飾る期間の目安
七夕飾りを飾る期間には、古くからの習わしと現代のライフスタイルに合わせた考え方があります。
本来の習わし
七夕飾りは、七夕前日の7月6日の夕方から夜にかけて飾り付けを行い、7月7日の夜には片付ける「一夜飾り」が基本とされています。これは、昔の暦で「一日の始まりは日没」とされていたことに由来し、7月6日の夜が七夕の当日と見なされていたためです。神様をきちんと迎え入れるために、前夜までに飾り付けを終えるのが良いとされていました。
現代の一般的な期間
現在では、7月7日当日だけでなく、1~2週間前から飾り付けを楽しむ家庭やイベント会場も多く見られます。特に幼稚園や学校などでは、子どもたちがゆっくりと飾りを作る時間も考慮し、早めに準備を始めることが多いです。
適切な片付け・処分時期
七夕飾りの片付けは、七夕が終わった7月7日の夜、または翌日の8日に行うのが一般的です。
一度飾った七夕飾りは、来年使い回すのではなく、毎年新しく作り変えて処分するのが習わしとされています。これは、飾りに厄災や願い事が移ると考えられていたため、役目を終えたら手放すことで、願いを神様に持っていってもらうという意味が込められています。
七夕の短冊・笹・飾りの主な処分方法と選び方
七夕飾りを処分する方法はいくつかありますが、それぞれのマナーや注意点を理解し、自分に合った方法を選ぶことが大切です。
そのままごみで処分する場合のマナーと注意点
多くの七夕飾りは、自治体のルールに従って一般家庭ごみとして処分することが可能です。
分別方法
紙など可燃性の素材でできた短冊や飾りは「燃えるゴミ」に分類されます。
本物の笹は「燃えるゴミ」として処分できます。ただし、ごみ袋に入らない場合は、ハサミで切ったり折ったりして、袋に入る大きさに整えましょう。笹の葉で指を切らないように注意が必要です。30cmを超える大型の笹は「粗大ゴミ」となる可能性があるため、自治体のルールを確認してください。
造花(プラスチック製)の笹や、プラスチック・金属製の飾りは「燃えないゴミ」または自治体が指定する分別区分に従って処分します。
処分時のマナー
願いが込められた短冊や飾りをそのままゴミ袋に入れることに抵抗がある場合は、白い紙で包んでから捨てるのがおすすめです。白には「清める」という意味合いがあるとされています。
処分する際は、これまでの感謝の気持ちを込めて、丁寧に扱いましょう。
お焚き上げ・神社への奉納:手順・費用・受付方法
「お焚き上げ(おたきあげ)」とは
お焚き上げとは、お守りや御札、縁起物、故人の遺品など、特別な思い入れのある品を神社やお寺の境内で燃やし、浄化・供養する日本古来の宗教儀式。魂が宿っているとされる品物や、役目を終えた大切な品物を、神社やお寺で火を灯して供養し、浄化する日本の伝統行事のことです。
願いが込められた短冊や飾りを、より丁寧に手放したいと考える方には、お焚き上げや神社への奉納がおすすめです。
七夕の短冊も「願いを天に届ける」という意味で、お焚き上げに適した品物とされています。
単に「ゴミとして捨てる」のではなく、「感謝の気持ちを込めて天にお返しする」という精神的な意味合いが強い儀式です。
七夕飾りを気持ちよく手放すために
古くから日本では、「物には気持ちや魂が宿る」と考えられてきました。七夕飾りも例外ではなく、家族や自分の願い、子どもたちの成長への思いが込められています。そのため、単なるゴミとして処分するのではなく、感謝の気持ちを込めて手放すことが大切です。お焚き上げや神社への奉納は、そうした「気持ちの整理」をするうえで非常に有効な手段と言えるでしょう。
お焚き上げの主な目的
- 魂を天に返す お守り、お札、仏像など、神仏の宿るものから魂を抜き、元の場所(天)へお返しします。
- 浄化と供養 故人の遺品や、思い入れが強くて捨てにくいものを火で清めることで、執着を断ち切り、持ち主の心に区切りをつけます。
- 厄除け・感謝 役目を終えた品物に対し、「ありがとうございました」という感謝を伝えて処分します。
お焚き上げによく出されるものの例
- 神仏に関するもの: お守り、お札、破魔矢、だるま、しめ縄
- 故人に関するもの: 写真、手紙、衣類、日記、遺品
- 生活の中で大切にしていたもの: 人形、ぬいぐるみ、財布、印鑑
- 七夕(イベント)で使用したもの: 短冊、七夕笹
お焚き上げの注意点(何でも燃やせるわけではない)
最近では環境配慮(ダイオキシン対策など)のため、プラスチック製品、ビニール、金属、ガラスなどは受け付けてもらえない、あるいは火に入れず「お祓いのみ」となるケースが増えています。事前に持ち込み先のルールを確認するのがマナーです。
その他の方法(自宅でのお清め・記念保存など)
自宅でのお清め
自宅で処分する場合でも、白い紙に包み、少量の塩をかけてお清めをしてから捨てる方法があります。これにより、気持ちの整理をつけ、罪悪感を軽減できるとされています。
記念保存
特に子どもが書いた短冊や手作りの飾りは、記念として保管しておくのも良いでしょう。短冊をラミネートしたり、七夕飾りの写真と一緒にアルバムに挟んだりすることで、子どもの成長記録として残すことができます。ただし、役目を終えた飾りを処分するという本来の考え方もあるため、完全に保存し続ける必要はありません。

お焚き上げを依頼する方法
一般的には以下の3つの方法があります。
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| 神社・お寺へ持ち込む | 最も一般的。正月の「どんど焼き」などで受け付けていることが多いです。 |
| 郵送サービスを利用する | 遠方の神社や、お焚き上げ専門の業者に箱に詰めて送る方法です。 |
| 遺品整理業者に依頼する | 遺品整理の際、提携している寺院などで一括して供養してもらえます。 |
お焚き上げ・神社奉納の手順と費用のまとめ
七夕の短冊や飾りを神社で奉納したり、お焚き上げを依頼したりする際の手順と費用について、より詳しく見ていきましょう。
神社への奉納・依頼方法(持ち込み・郵送)
直接持ち込みの場合
近くに短冊奉納や七夕飾りのお焚き上げを受け付けている神社があれば、直接持ち込むのが一般的です。事前に電話で問い合わせ、受付の可否、費用、日時などを確認しましょう。
多くの神社では不燃物を受け付けていない場合が多いため、飾りの素材も確認が必要です。
事前連絡
まずは、近隣の神社やお寺に電話で問い合わせ、七夕飾りの奉納やお焚き上げが可能か確認します。受付期間、時間、対象となる品物、費用などを具体的に尋ねましょう。全ての神社が七夕飾りを受け付けているわけではないため、事前の確認が不可欠です。
品物の準備
奉納する短冊や飾りは、白い紙で丁寧に包んで持参するのがマナーです。不燃性の素材が含まれている場合は受け付けてもらえないことが多いので、分別しておくか、事前に確認しておきましょう。
奉納・供養
指定された受付場所で飾りを渡し、お気持ちを賽銭箱に入れるか、所定の費用を支払います。その後、神職によるご祈祷や供養が行われ、後日お焚き上げされるのが一般的です。
郵送サービスでの奉納を利用する場合
近くに奉納できる神社がない場合や、多忙で持ち込みが難しい場合は、郵送でのお焚き上げを受け付けているサービスもあります。「お焚き上げサービス」などがこれに該当し、専用キットを注文して短冊や飾りを送るだけで、供養・お焚き上げを依頼できます。不燃物も受け付けている場合があるため、便利です。近年では、環境負荷への配慮や利便性から、郵送でのお焚き上げを受け付けているサービスが増えています。
「神社のお焚き上げ」サービス
サイトから「お焚き上げキット」を注文し、届いた専用封筒や箱に短冊や飾りを詰めて送るだけです。
特徴
・全国どこからでも郵送で依頼可能
・個数制限がなく、規定サイズ内なら何点でも送付可能
・クレジットカードやオンライン決済が利用可能
・ご祈祷動画や証明書が発行されるサービスもあるため、依頼者も安心して手放すことができます。
お焚き上げにかかる費用の相場
神社に直接持ち込む場合、費用は「お気持ち」として賽銭箱に入れるか、数百円から数千円程度を目安とする場合が多いです。郵送サービスを利用する場合、キットのサイズや内容によって異なりますが、数千円から数万円程度が目安となります。
お焚き上げの費用は、依頼する場所や品物の種類、量によって異なります。
神社・お寺に直接持ち込む場合
- 短冊や小さなお守り・御札などであれば、「お気持ち」として無料、または数百円〜3,000円程度が相場です。賽銭箱がある場合は、感謝の気持ちとしてお賽銭を入れると良いでしょう。
- 神棚や人形など、大きな品物の場合、数千円から1万円程度かかることもあります。
- 多くの場合は「合同供養」(複数の依頼主のものをまとめて供養)ですが、個別供養を希望する場合は費用が高くなる傾向があります。
郵送の「お焚き上げサービス」を利用する場合
- 「お焚き上げサービス」の場合、短冊数十枚程度を送る「レタータイプ」キットは定価販売 1セット ¥18,200(税抜価格)です。
- 大量の短冊や他の飾りをまとめて送る「ボックスタイプ」のキットは定価販売 1セット ¥21,600(税抜価格)で提供されています。
お焚き上げを依頼する際の注意点
- 不燃物の確認
多くの神社やお寺では、環境負荷への配慮からプラスチックや金属、ガラスなどの不燃物のお焚き上げを受け付けていません。一部の郵送サービスでは不燃物も受け付けていますが、その場合でもご祈祷後に産業廃棄物として処理されることがほとんどです。事前に必ず確認しましょう。 - 時期の確認
どんど焼きのように、特定の時期にしかお焚き上げを行わない場所もあります。通年で受け付けているか、事前に確認が必要です。 - 費用とマナー
費用が「御志納」や「お気持ち」となっている場合、白い無地ののし袋に1万円以上を包み、「玉串料」または「初穂料」(神社の場合)、「御布施」(お寺の場合)と表書きして納めるのが一般的です。新札である必要はありませんが、きれいな紙幣を用意するのが望ましいとされています。
短冊や笹だけでなく、その他の七夕飾りの処分方法
七夕飾りは短冊や笹だけではありません。さまざまな願いが込められた他の飾りも、適切に処分しましょう。
「飾りごとの分別方法」は以下の通りです。
| 短冊 | 紙製がほとんどなので「燃えるゴミ」として処分できます。白い紙に包むなどの配慮をするとよいでしょう。 |
|---|---|
| 笹 | 本物の笹は「燃えるゴミ」です。ごみ袋に入るサイズにカットして出します。プラスチック製の造花は「燃えないゴミ」または自治体の指定に従って処分します。 |
| 紙衣(かみごろも) | 紙製なので「燃えるゴミ」です。 |
| 吹き流し | 紙製が多いので「燃えるゴミ」です。くす玉の部分にプラスチックなどが使われている場合は、分別が必要です。 |
| 網飾り・貝飾り・ちょうちん・くずかご・折り鶴・星飾りなど | これらも紙製のものがほとんどなので「燃えるゴミ」として処分します。飾り付けに使った紐やテープなどがプラスチック製の場合は、外して分別しましょう。 |
| 電飾など | 電池や電子部品が含まれる場合は、自治体の小型家電リサイクルや不燃ゴミのルールに従って処分します。 |
環境やゴミ出しルールへの配慮
- 自治体ルール厳守
地域によってゴミの分別ルールが異なるため、必ずお住まいの自治体の指示に従って分別・処分してください。 - 不法投棄の禁止
昔の風習として七夕飾りを川や海に流す「七夕送り」がありましたが、現代では環境汚染や不法投棄とみなされるため、許可されたイベント以外では絶対に行わないでください。 - 家庭での焼却の注意
自宅の庭などで七夕飾りを焼却することは、煙や火災のリスク、近隣への迷惑となる可能性があるため、避けるべきです。条例で禁止されている地域も多いので、事前に確認が必要です。
笹の処分に関する地域ごとの違い(焼却・埋める・流すなど)
多くの地域で笹は「燃えるゴミ」として処理されますが、一部地域では異なる風習やルールが存在する場合があります。
- 伝統的な処分方法(焼却)
七夕飾りを燃やして、その煙が天に昇ることで願いが届くと信じられてきました。現代では環境規制により、家庭での焼却は困難です。 - 川に流す(七夕送り・七夕流し)
かつては笹ごと川や海に流すことで穢れを祓い、神様に願いを届ける風習がありましたが、現在では環境保護の観点から、ほとんどの地域で禁止されています。一部、金沢市の浅野川のように、イベントとして当時の風習を残している地域もありますが、これは自治体や団体の管理下で行われています。 - 現代の一般的な処分
大多数の地域では、小さく切って「燃えるゴミ」として出すことが最も現実的な方法です。
罪悪感なく飾りを処分するための気持ちの整理
七夕飾りには、人々の願いや思いが込められているため、単に捨てることに抵抗を感じる人も少なくありません。罪悪感なく飾りを手放すための気持ちの整理の方法を紹介します。
気持ちを込めて感謝を伝えるコツ
- お焚き上げ・奉納
神社やお寺でのお焚き上げや奉納は、物に宿った思いや魂を供養し、感謝の気持ちを伝えるための古くからの儀式です。願いが込められた短冊は、火の力で天に還すことで、神様に願いが届けられるとされています。これにより、心の負担が軽減され、罪悪感なく手放せる効果が期待できます。 - お清め
自宅で一般ごみとして処分する場合でも、白い紙に包み、少量の塩を振ってお清めをするだけで、気持ちの整理につながります。清められた状態で手放すことで、物への感謝を示すことができます。 - 写真に残す
飾り付けの様子や短冊の願い事を写真に撮って残しておくことも、良い供養になります。特に子どもが作った飾りは、成長の記録として見返す楽しみにもなります。
処分前のお清め・お礼の言葉
処分する前には、飾りに向かって「今年もありがとう」「願いを守ってくれてありがとう」といった感謝の言葉を心の中で唱えましょう。そして、白い紙で丁寧に包むなどの一手間を加えることで、より気持ちよく手放すことができます。
まとめ
七夕の飾りを心地よく手放すために
七夕飾りは、私たちの願いや希望、家族の思い出が詰まった大切なものです。七夕の時期が終わると、適切に手放すことで気持ちの整理がつき、新たな一年を清々しい気持ちで迎えられるでしょう。ただ捨てるだけではなく、感謝の気持ちを込めて処分することが重要です。
自分や家族に合った処分方法の選び方
本記事で紹介したように、七夕飾りの処分方法にはいくつかの選択肢があります。
- 手軽さを重視するなら
自治体のルールに従って、白い紙に包んで一般ごみとして処分する方法が最も手軽です。 - 丁寧さを重視するなら
神社やお寺への奉納、または郵送での「お焚き上げサービス」を利用するのがおすすめです。特に願いが込められた短冊をそのまま捨てることに抵抗がある方や、企業・団体で大量の短冊を処理する必要がある場合に適しています。 - 思い出として残したいなら
写真に撮ったり、スクラップブックに残したりして、形として記録を残すことも良い方法です。
ご自身の状況や気持ちに寄り添い、最適な方法を選んで、七夕飾りを心地よく手放しましょう。
参加者の皆様が一生懸命書いた「願い事」。その想いを大切に扱い、最後まで責任を持って見届けることが、イベントの価値をさらに高めます。
今回は、七夕イベント後の短冊の処分にお困りの方へ「お焚き上げ」のご紹介しました。
最後まで、ご覧いただきありがとうございました。


